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■製品レビュー 
MORISAWA PASSPORT

■登場の背景
■申し込み
■インストール
■アップグレードキット
■解約






Apple Store(Japan)
2008/4/4
 MORISAWA PASSPORT

 モリサワの『MORISAWA PASSPORT』は僅か52,500円/年でプロ向けの高品質なモリサワフォントが全282書体使えるという画期的なライセンスプログラムだ。フォントワークスのLETSから始まったこのビジネスモデルはイワタやNISなどにも広がり、フォントの新しい流通システムとして定着し始めている。今回はこの『MORISAWA PASSPORT』の導入から解約までをレポートしていく。


『MORISAWA PASSPORT』登場の背景

 モリサワフォントは永らくMacのデザイン分野という限られた範囲で使われていたフォントだ。モリサワは写植から始まった会社なので初めからプロのデザイナーを相手に商売していたワケだ。フォントの品質は高く、発売当時はフォント不足ということもあって1書体49,000円でも飛ぶように売れまくり、モリサワの躍進に多大な貢献を果たした。
 しかし、フォントワークスやリョービ、タイプバンク等からプロ品質のフォントが続々リリースされフォント不足は解消。また、ダイナフォント(現ダイナコムウェア)等から格安フォントパッケージが発売されてフォントの価格破壊が進み、モリサワといえども1書体数万円もするようなフォントは以前ほど売れなくなってきた。これは他社でも同じことで、この状況を打破すべく、プロ向けフォントメーカー大手のフォントワークスは2002年に同社がリリースしている書体を低料金ですべて使える『LEST』という今までにない年間ライセンスプログラムでフォントの提供をし始め、従来ターゲットとしていたデザイナーはもちろん、Windowsユーザーやデザイナー以外の新しい顧客の開拓にも成功する。基本的に年間契約なので安定した収入が得られるのもメーカーとしては魅力と言えるだろう。

 年間ライセンスプログラムの魅力は価格面ばかりではない。特にDTPの現場ではデザイナー間や製版会社といったデータをやりとりする間でアプリケーションソフトやフォント環境を合わせる必要があるのだが、デザイナーが使ったフォントを製版会社側が持っていなかったりすると文字が置き換わってしまい、作り直しになってしまう。また、CIDフォントとOpenTypeフォントも互換性がないのでアウトだ。こういった不統一な環境が長年DTPで問題となっていのだが、年間ライセンスプログラムを導入することで一挙に環境を統一させることが可能になった。


パッケージで揃えると高級乗用車が買えてしまう内容が、
『MORISAWA PASSPORT』だと
年間契約:¥52,500(税込)で済む



 ライバル会社の成功を座視しているワケにもいかなかったのであろう。元々活字メーカーでプロ向けのフォントをリリースしていたイワタはフォントワークスと提携し『イワタLETS』を開始。2005年にモリサワも『MORISAWA PASSPORT』にて同ビジネスに参戦。フォントメーカーの老舗であるNISも2007年に『レンタルフォント』を投入し、年間ライセンスプログラムビジネスはフォント流通の新しい形として定着していった。
 デザイナーではない書体好きの一般ユーザーにとってはモリサワフォントは高嶺(高値)の花で、憧れの対象でしかなかったが、一気に手に届く価格になり喜んでいる個人ユーザーも多いのではないだろうか。


『MORISAWA PASSPORT』への申し込み

 『MORISAWA PASSPORT』は通常申し込みから実際に使えるまで2週間くらいかかり、店頭で気軽に購入できるものではなかったが、2007年11月に購入前の書類手続き一切なしですぐ利用できる『MORISAWA PASSPORT ONE(モリサワパスポートワン)』を発売し煩雑さを解消した。ただし、『MORISAWA PASSPORT ONE』は割引制度は適用されず、MacOS X 以前の環境には対応していない。

 モリサワCIDフォントユーザーは通常の申し込みをした方が割引制度が適用され若干お得なので、時間的余裕があればそちらを選択した方がいいだろう。通常申し込みの手順は次の通りである。

1・モリサワのサイト「通常のご購入手順」からWebもしくはFAXにて見積依頼をモリサワに送る。
2・ユーザーの登録書体数、契約台数により各種割引を適用した見積兼発注書をモリサワが発行。
3・見積兼発注書が手元に届いたら、署名・捺印後、最寄りのモリサワフォント取扱店に送る。
4・発注確認後、約10営業日で届けられる。

 初めてモリサワフォントを導入する新規ユーザーは「ストレートプラン」もしくは「MORISAWA PASSPORT ONE」になる。詳しくはモリサワのサイトで確認して欲しい。


すぐに利用できる『MORISAWA PASSPORT ONE』
販売価格:¥52,500(税込)


インストール

 商品はモリサワからではなく、取扱店から送られてくる。内容はバインダー形式のパッケージとCD-ROM数枚、ライセンス証明書、書体ポスター等。


『MORISAWA PASSPORT』はグッドデザイン賞を受賞


パッケージの内容
後日、場合によってアップグレードキットが送られてくる



■インストーラ
 各CD-ROM内にインストーラーがあるが、『MORISAWA PASSPORT』は白いインストーラCD-ROM内のインストーラーでしかインストールできないのでちょっと注意。


インストールは『MORISAWA PASSPORT』のインストーラーで行う


 インストーラーが起動すると「CIDフォント」か「OpenTypeフォント」のどちらをインストールするか訊ねるダイアログが出てくる(Mac版の場合)。どちらかを選んでも下図の「インストールキー入力」画面が出てくるので、「ライセンス証明書」に同封されているインストールキーを入力する。


 無事インストールが完了すると下図のウインドウが表示される。

了解!

 なお、インストール所要時間はCIDフォント166書体が約9分50秒。OpenTypeフォント262書体が約23分11秒だった。FDを用いていたOCFフォントが1書体に数分かかっていた昔を思えば雲泥の差だ。


■充実のモリサワフォント!
 フォントフォルダを確かめると、モリサワフォントがある!ある!!あるっ!!! これだけ数が揃うと嬉しくなってきますね。とりあえずIllustratorを立ち上げて適当な文字を打って書体を変えまくって悦に浸ります。(笑 ファミリー展開が美しいです。丸フォークがいい感じです。タイプラボゴシックが新ゴで使えて嬉しいです。フォントを充実させることによってデザインの幅も広げることができる。
【モリサワフォント書体見本はコチラ】



モリサワフォントで埋まっているフォントフォルダ内



 一通り楽しんだら使わなさそうなフォントをフォントフォルダから削除していく。勿体ないが、フォントメニューにズラズラフォントが並ぶと作業効率が悪くなるので仕方ない。中でも使い勝手の悪いかな書体をゴッソリ削除。できたらフォントワークスのように漢字と混植させた総合書体としてリリースしてもらえると助かる。
 

アップグレードキット

 契約期間中に新しいフォントがリリースされるとモリサワからがアップグレードキットとして送られてくる。思いがけないプレゼントのようで、これは嬉しい。


アップグレードキット


 アップグレードキットにはフォントだけではなく、「MORISAWA FONT / FONT IMAGE 2007」という書体見本帳のようなものも同梱されることがある。240ページほどのかなり立派な作りで、奥付には定価2,100円との記載が。『MORISAWA PASSPORT』ならではのサービスである。

MORISAWA FONT / FONT IMAGE 2007

解約

 契約期間が残り1ヶ月ほどになるとモリサワから電話が掛かってきて継続か解約かを訊ねられる。契約を希望すればたぶん継続手続きの書類が送られてくるのだろう。今回私は解約することにしたので解約手続きの書類が送られてきた。解約することにしたのは元々試しに使ってみたかったという思惑だったので、その目的は達せられたからだ。
 モリサワフォント全282書体を使い倒すのは至難のワザで、DTPの仕事をしている私でさえまともに使ったのは50書体もなかっただろう。丸ゴシック体や楷書体などは他社フォントを愛用しているし、すでにパッケージのOpenTypeフォントを30書体ほど持っていたので必要なフォントを買い足した方が安上がりだったりする。ただ、だからといって『MORISAWA PASSPORT』を否定するつもりは微塵もない。備えあれば憂い無しで、フォントの種類は多い方が良いに越したことはないし、何台もPCを使っているような事務所などでは『MORISAWA PASSPORT』の方がパフォーマンスがいいだろう。

 実は『MORISAWA PASSPORT』は継続契約すると割引される制度がある。単年契約だと50,000円/年(税別)なので10年で計50万円。しかし継続契約だと割引が適用されて約37万円と実に13万円もお得になるのだ。さらに、5年分一括払にすれば約35万2千円になる。パッケージ製品にするか、『MORISAWA PASSPORT』にするか、自分に合ったフォント環境を考えてみて欲しい。


解約手続きの書類とCD-ROM


■削除プログラムでフォントをアンインストール
 解約の手続きは、モリサワから送られてくる「削除プログラム」を用いてPCにインストールしたフォントを削除する。このプログラムは完全ではないらしく、削除されたのはOpenTypeフォントだけでCIDフォントはフォントフォルダに残ったままだった。マニュアルには書かれていなかったが、手動で削除する必要がある。


削除プログラム実行


■インストールメディアはモリサワへ返却
 削除プログラムの実行後、デスクトップに削除記録の書類が作成される。モリサワにはこの書類をプリントアウトして署名、捺印したものと「ライセンス証明書」、「削除誓約書」、インストールメディア一式を返送することになる。

返送する内容
ライセンス証明書など紛失しないように


■フォントの管理は徹底すべし
 『MORISAWA PASSPORT』はフォントの使用を期間限定でライセンスしただけであり、解約後にモリサワフォントを使い続けることはもちろんできない。誓約書に依れば、削除を確かめるためにモリサワから監査請求がなされる可能性もあるようだ。もし無許可複製の存在が判明した場合は監査の実施費用及び、無許可複製された書体数分に応じた金額(シングルパッケージ価格相当)の支払い義務が発生する。全282書体を無許可複製していたら…、計算がちょっと面倒なのでおおよそで言うが、少なくとも450万円以上にはなる。なお、あまり知られていないが『MORISAWA PASSPORT』でインストールしたフォントには契約者を特定できる情報が書き込まれているので言い逃れはできない。また、もし知らない内に第三者が勝手に無許可複製したフォントを外部に持ち出して拡散させていたら出所がすぐ分かるので、莫大な金額を請求されるという恐ろしいことにも成りかねない。当然のことだが、フォントの管理は厳重に行うようにしたい。

 今回はとりあえず解約したが、再度契約することになるだろう。またキャンペーンをしてくれるといい切っ掛けになるのだが…。(笑

 このレビュー記事を書いていたら、フォントワークスからLETSの継続案内が送られてきた。こちらのレビューも近々アップするのでお楽しみに。



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