|
|
|
10年ほど前はパソコンで使える和文フォントは二桁程度しかありませんでしたが、いまや2,000を超えチョイスするのに迷うほどです。しかし、状況によって使う書体はほぼ決まってきます。会社の上司に提出する書類は明朝体か細ゴシック体、スーパーのチラシにはPOP体など。間違っても葬儀の案内にまる文字体を使う人はいないでしょう。ここでは書体の種類を見ていきましょう。
●基本書体
標準書体とも呼ばれ、一般的に本文で使われているような普遍的な書体。「明朝体」「ゴシック体」「丸ゴシック体」の3種類を指します。
|
明朝体 | 参考出典:大日本スクリーン製造/ヒラギノ明朝 |
横線が細く、縦線が太い。書籍などの本文用活字として最も普通に使われている。
|
ゴシック体(セリフ系) | 参考出典:モリサワ/太ゴB101 |
全体に同じ太さの線でできており、角ばっている書体。オジさん世代はゴチックという。また、米国ではゴシックあるいはブロック‐レター、英国ではサン‐セリフ、欧州ではグロテスクと呼ぶ。欧米ではゴシックはブラック‐レターのことをさす。
|
ゴシック体(サンセリフ系) | 参考出典:モリサワ/新ゴM |
セリフのないゴシック体。「サン」とは無いという意味。和文では写研の「ゴナ」が代表的。欧文のゴシック体は普通サンセリフ。
|
丸ゴシック体 | 参考出典:日本活字工業/日活丸ゴシック体 |
ゴシック体の角などにラウンド処理を施した柔らかみのある書体。
●新しい丸ゴシック体
1972年に発表された写植書体「ナール」は懐を広く取り、小さい文字でも読みやすく文字組したときの見た目の洗練さなどが優れており、新しい丸ゴシック体として認知され、その後の書体に大きな影響を与えました。フォントワークスの「スーラ」やモリサワの「新丸ゴ」などもナールの設計思想に近いといえます。
フォントワークス/スーラ-B
明朝体だが、一般的な明朝体と違って懐を大きく取っており、新聞紙面の小さい文字でも見やすい工夫がされている。
|
●筆書体
「楷書体」「行書体」の2つが代表的ですが、筆を用いて書いたような書体も筆書体に分類されます。
|
教科書体 | 参考出典:フォントワークス/ユトリロ-DB |
教科書で用いられる楷書的書体。書き順やハネやトメ、画数がハッキリしているのが特徴。
隷書から転化したもので、点画をくずさない書き方。魏(三国)の鍾ようがこれを改良し大いに流行。真書。正書。真。楷。
楷書と草書との中間の書体。楷書より先に発生した。隷書を簡略にし、画を続け書きにしたもの。
秦の雲陽の程ばくが篆書を簡単にした直線的な字体を、漢代に装飾的に変化させた書体。後世、これを漢隷または八分といって古い隷書と区別したが、一般に隷書といえば漢隷を指す。楷書を隷書ということもある。漢代の書記や庶務係(下級役人)がメモに用いた。
奈良時代から平安時代末期まで、日本で作られ使用された印章。隋・唐の様式にならった鋳銅印で、公文書などに押された。和様化した篆書や楷書が多く、すべて朱文。(出典:三省堂・大辞林)
大篆・小篆があり,隷書・楷書のもとになった。現在は、印章などに使われる。篆文。
中国・宋の時代に完成された書体。明朝体の基となった。
行書をさらにくずしたもので、早くつづけて書けるようにしたもの。草体。普通の人にはナカナカ読めません。(^^;
歌舞伎の看板または番付などを書くのに用いる書風。肉太で丸みを帯びる。江戸中村座の手代岡崎屋勘六(号、勘亭)から始まるという。
江戸で、興行の看板や番付に用いた独特の書体の文字の総称。歌舞伎の勘亭流のほか、寄席文字・相撲文字など。
独創性・デザイン性があり、今までの分類ではカテゴリライズできない毛筆書体。白舟書体(旧社名・丸岡白舟印舗)からリリースされた「鯨海酔侯」の登場で注目されるようになった。
ペンで書いたような細字の書体。楷書系から行書系のものまである。
|
●その他
店頭広告.屋外看板、ショー‐ウインドー、店内ポスターの類などに用いられる、太く軽快さを持った書体。パソコンのPOP書体には細い文字も存在する。
一時期女子中高生の間で流行った、丸く変形した文字。この文字に眉をひそめた識者も多かったが、斬新ではあった。アイドルの手書き文字もフォントになりましたね。
そのままロゴタイプにも使える、デザイン要素のあるゴシック体。「鴨野かな」が先駆けと思われる。
|
デザイン書体(本文系) | 参考出典:ダイナフォント/麗雅宋W5 |
写植書体「タイポス」がモダン和文書体の先駆けといわれる。本文にも使えるデザイン要素のある書体。
|
デザイン書体(見出し系) | 参考出典:リコー/重ね丸ゴシックH |
「ディスプレー書体」といわれる書体。オリジナリティが高くデザイン要素の強い書体。写植時代に写研の「スーボ」が登場し、「ボカッシィ」等インパクトの強いデザイン書体がブームになった。
|
実は私もあまり活字や写植には詳しくないのですが、文字を語る上でこの書体は外せないというのを挙げてみました。
写植文字の指定から解放された喜びをキミは体験したか!?(^^ 級数表よ、さようなら。
今は無き東京築地活版製造所が作った活字で、秀英体とともに現在の明朝体に大きな影響を与えた。味岡伸太郎氏の「築地」や字游工房の「游築」などにそのデザイン思想が受け継がれている。
大日本印刷の前身である秀英舎によって生み出された、現在の明朝体の源流ともいえる書体です。時代と共に改刻が行われ、完成度を高めてきました。各社から復刻版がリリースされている。
ナールをデザインした中村征宏氏の作品。ナールと同じく懐を深く、直線を主体としたコンセプトの角ゴシック体。その完成度の高さは、モリサワの「新ゴ」やイワタの「新ゴシック」等に強い影響を与えた。8ウエイト+派生書体のファミリー。
第一回石井賞受賞作品。直線と懐を大きくとった従来にない丸ゴシック体で、大人気の書体となった。中村征宏氏デザイン。7ウエイト+派生書体のファミリー。
第二回石井賞創作タイプフェイスコンテストで最優秀賞を獲得した書体。当時写研の若手デザイナーであった故鈴木勉氏のデザイン。鈴木氏はのちにヒラギノを制作した字游工房を設立する。
|
タイポス | 参考出典:グループタイポ/タイポスオールマイティ312 |
1968年に登場。仮名のみの書体だが、発売と同時に大ブームを起こし、以後の日本のタイプフェイスデザインに大きな影響を与えた。桑山弥三郎、伊藤勝一、長田克巳、林隆男各氏の合作である。後に漢字の揃った総合書体も発表された。
|
|
|